レンタルキッチンではない。シェアキッチン「MIDOLINO_」とは?

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MIDOLINO_オーナー
一般財団法人フラットデザイン 舟木 公一郎さん インタビュー

飲食店の遊休時間に店舗機能をシェアするシェアレストランに対して、ここ「MIDOLINO_(ミドリノ)」では、あらかじめシェアを前提に作られた「シェアキッチン」です。この施設のすごいところは、飲食店営業のみならず、菓子製造・惣菜製造・ソース類製造・粉末食品製造など多様な免許を取得しており、それら複数のブースがフードコートのように設置されている点です。このユニークな施設を立ち上げた舟木さんにお話しを伺いました。

起業の経緯

学生時代からサスティナブルな社会のあり方に興味がありました。効率化・分業化の世の中で歯車のような生き方でいいのだろうか?それが持続可能な社会なのだろうか?そんな想いの中、アメリカ留学後、音楽の世界にエンジニアとして飛び込みました。しかし、そこは「売れる音」が求められる消費財を生み続ける傾向が強い社会であり、文化としての音楽ではなく、捨てられるものをつくり続けているのでは?という感覚が強くなっていきました。

誰かを想ったり、支えあったり、損得勘定を超えた「自分以外のために」関わり合いのある社会になるために自分は何ができるだろうか、と改めて立ち返った時に、そこで出た答えが「子ども」だったんです。子どものために!と想いを持ち寄れる、産み育てやすいコミュニティをつくろうと。ちょうどそう想い立った時、人件費を法基準の倍払ってでも子どもたちの想いを拾ってあげられる保育環境を整えよう!という活動を20年続けていたNPOの保育園に出会います。

そして、そのNPOから運営受託という形でプリスクールの事業をはじめ、持続可能な社会づくりへの挑戦が始まりました。

ソーシャルデザインとガイアの夜明けへの出演

今ではソーシャルデザインと言われることかもしれませんが、その後も、子育て/森林/自然エネルギー/高齢者/終末医療など、既存の資本主義の仕組みだけでは実現しにくいモデルの事業を、ブランドをデザインすることで共感を生みながらコミュニティとして皆でより良いものをつくっていく、ということを大切に活動を続けています。

地元、森林業を元気にするために、東京の木を使って保育園を木質化・家具/玩具を製作したり、認知症でも地域の中で活き活きと生きられる社会をつくるデイサービスさんだったり。その中で、武蔵野市民文化会館の立て直し時に出た廃材を、捨てずに思い出の品として付加価値を付けるといったデザインの取り組みはガイアの夜明けでも取り上げられました。

グリーンパーク商店街を創業支援の場に選んだ理由

保育園の仕事を手始めに武蔵野エリアでの仕事が多くなりました。クリエーターも多く、新しいことを受け入れる視点があったり、文化的な素養の高いのが地域基盤がこの土地の風土だとつくづく感じます。このエリアにかかわる中で武蔵野市の創業サポート施設事業に公募・採用となりました。

「MIDOLINO_」の内装は工務店に発注せず、コツコツ自分たちで作り、約100平米キッチン設備5ブース備えた内装、通常2000万以上はかかるところ、700万かからず仕上げました。

「MIDOLINO_」の企画段階のコンセプトは「生活協同組合」でした。コミュニティフードモールとして複数の出店者が同時に出店できる広さを考えていて、グリーンパーク商店街の元八百屋さんの物件と出会い、地域活動が盛んなエリアでとてもいいが住民の方が多く、そしてこの車の通らない道幅、挨拶をせざるを得ない距離感がとてもいいなと思い、グリーンパークに決めました。

なぜ創業支援を?それも、なぜ食の創業支援を?

なぜ人は働くのか?お金がないといきていけないと言う人もいますが、じゃあお金を稼ぐためだけに私たちは生きているのか?仕事ってなんなのか?高齢者施設で感じたことでもあるのですが、自分ができることで誰かに喜んでもらって、ありがとうと言っていただける。その延長で、自分が提供した価値の対価としてお金がもらえる、これが仕事の原点だと思います。

レールに乗って固定概念に縛られた他人の人生を歩くのではなく、自分の中から湧いてくることから心を決めて、それを仕事にする。やろうと思えばできる。その選択肢があるよ、ということをより多くの人に知ってもらいたかった。そういう人たちが集まれるHUBになって、個性を持ち寄った仕事と文化が育まれていく、食のシェアオフィスとして一つ社会インフラになったらいいなと考えています。

そして「仕事」と「暮らし」は、そもそも近い位置にあることが自然です。趣味や趣向が全く同じ人は二人と存在しませんが、食べない人はいない。食べることと通じて地域の暮らしの入口になり、多様な人とつながるきっかけになり新しい価値を生み出すことに食はピッタリだと思います。

「サービス」から「コミュニティ」へ~なぜシェアキッチンを作ろうと思ったのか?

MIDOLINO_では同じキッチンを複数名でシェアしますが、シェアリングの大切な要素は「他者への信頼」です。マニュアルで縛り付けるという考え方はありません。最低限のルールのもと、お互いに譲り合い、違いを理解しようとする姿勢を持ち、お互いの力を活かし合うにはどうしたら良いか、という「協業」の考え方がベースにあります。

儲けるためだけの一方的な「サービス」ではなくて、未来のリスクを分散する双方向の「シェア」という概念を活かした一種の「コミュニティ」。レンタルキッチンではなく、シェアキッチンと銘打っているのはそういう所以です。

ようやくMIDOLINO_でもコラボした仕事づくりが見られるようになってきました。イベント用にオリジナルのパンをパン屋さんにつくってもらったり、一人では請負きれない規模の仕事をチームを作って受けたり、それぞれ皆さんの強みを引き出しあって新しい価値を生み出しています。ないものねだりをしても仕方がありません。今できることを、今ある資源と今いる人で、お客様に喜んでもらうにはどうしたら良いか、こういう発想を持つことがこれからの仕事づくりの鍵になるのではないでしょうか。

今後の課題

今後は、必ずしも創業ではなくても、創業した人の事業を拡大した商品を量産する事業など、地域の仕事づくりの拠点づくりができたらと考えています。シェアキッチンはコミュニティでもあるのでコピペはできません。店舗だけではなく、この商店街だけでもなく、このエリア全体をどうやったら魅力的なエリアにできるか、そういう町全体で盛り上げていく仲間ができるかが今後の課題ですね。

実は現在、隣地でスイスチーズの店が工事中です。オーナーはMIDOLINO_の利用者さんです。MIDOLINO_での出店体験を通して、グリーンパーク商店街やこの地域の魅力を感じてくれたようで、同商店街に出店することをご決断下さいました。起業にあたり、事業計画や工事などご相談いただいており、「まちづくり工務店」と題して地域全体で応援しながら皆でお店をつくるというプロジェクトを立ち上げました。小さい積み重ねですが、さまざまな魅力ある人がいろんな形で関わり合い、やりたい仕事を踏み出せる、生き生きと暮らせる地域になっていく、その地域の拠点として必要とされる存在になるように活動を深めていきたいと考えています。

(工事中の隣地スイスチーズ店)

取材を終えて
既存の施設や設備を利用する「シェアレストラン」と、今回お聞きしたように一から作り上げることが多い「シェアキッチン」の方法論は少し違うかもしれない。しかし、飲食店のシェアリングを通じた創業支援やそれに伴う地域の活性化。そういった根底に流れるものは驚くほどに通っていると思いました。様々な考え方や方法論を持ったより多くのプレーヤーが参入することでこの世界はもっともっと広がっていく。そんな確信を得た取材でした。


※まだ、もう少しだけキッチン枠がありますので、興味のある方はご連絡下さい。
MIDOLINO_
住所    〒180-0012 東京都武蔵野市緑町1-5-20 第一根岸ビル1F
電話番号  0422-38-8457
HP     http://midolino.tokyo
メール   info@midolino.tokyo