スパイスを旬の野菜で食べるおばんざい風カレー。間借りから始まった、表参道「ハブモアカレー」

0
112

表参道国道246号と骨董通りの交差する好立地にあるハブモアカレー。日本のカレー文化に貢献したカレー店が表彰される「カレーアワード2015」の新人賞を獲得した実力店ですが、その始まりは月2回だけ営業する間借り店でした。外の喧騒とは裏腹に地下にある店内に入るととても落ち着く雰囲気で、女性一人でも訪れやすいハブモアカレー。オーナーの松崎洋平さんにその歴史をお伺いしました。

■新宿の名店「curry草枕」で修業。平行して間借り営業をスタート

‐ 2014年と早い時期に間借り営業を始められましたが、間借りするきっかけはどのような事でしたか?

僕自身がカレー好きだった事もあって、新宿のカレー店「curry草枕」で働く事になり、厨房でカレーをつくっていました。それからどんどんカレーづくりにはまり、自宅でもカレーをつくるようになっていったんです。

その頃知り合いのライブハウスやクラブでのイベントでカレーのケータリングを始めましたが、ケータリングだけではなく、自分で店を出してみたいと思うようになりました。その頃から「ハブモアカレー」という屋号は使っていましたね。もっとカレーを食べよう、という英語そのままの意味です。

「curry草枕」と平行して要町のカフェでもアルバイトしていましたが、カフェのオーナーにカレーのお店をつくりたい事を話したら、そのカフェは毎週水曜日が定休日だったので「定休日にカレー屋として使っていいよ」と言われたのが間借りする事になったきっかけですね。

2014年の7月頃の話ですが、当時は「間借り」という言葉もまだ無かったと思います。まず月に2回、隔週の水曜日に営業してみることにしました。

■SNSだけで口コミで拡散。当時は数少なかった「間借りカレー」

‐ 間借り営業がまだ珍しかったとのことですが、集客はどのようにされたのでしょうか?

チラシなどはつくらず、SNSのみで営業情報やメニューの告知をしていました。その頃ちょうどインスタグラムが流行りはじめたので、カレー系のハッシュタグをつけてカレーの写真を投稿していたら、カレー好きの方の目にとまったようなんです。インスタを見て来店された方が感想を口コミ投稿してくれて、それが広がっていったのかなと思います。

カレー好きの方は遠方からもいらっしゃって下さったので、有難かったですね。それに当時は東京で間借飲食店をされている方も少なかったと思うので、それが珍しかったから認知が広がり易かったというのもあるかもしれません。

■間借り営業開始1年で表参道に実店舗を開店

‐ 間借りからスタートされましたが、実店舗を持たれたい希望はあったのですか?

間借りを始める前から自分の店を持ちたいという構想はありました。表参道に出店することになったのは、「curry草枕」の常連のお客さんが偶然この店のオーナーで、直接「お店をやらない?」と声をかけてくれたからなんです。この店はそれまでも飲食店だったので、条件も良く、場所も良いので、これはやるしかない!と思いました。

当時働いていた「curry草枕」のオーナーにも相談したら「良い事だと思うのですぐにやってみたほうがいいよ」と背中を押して頂いたのも大きかったですね。内装は店自体の雰囲気が良く殆どそのままにしていて、写真を貼った程度なんです。準備期間に2、3か月かけて、2015年10月に実店舗としてオープンしました。間借りを始めてからは約1年後位のことです。

‐ それまでも間借りで営業されていましたが、実店舗になって感じた違いは?

店の規模も大きくなりましたし、間借りの時は月に2回の営業だったのが、週に6日でフルタイム営業になったので、それだけお客さんも増やさなければならず、当初は集客にも悩みました。カレー好きの方のコミュニティや口コミ効果だけに頼っていたのですが、もっと広くアピールしなければならなくなったんです。

以前から野菜にこだわったカレーを提供していましたが、表参道のお客さんの層を考えると、「野菜好きの健康志向の女性」というイメージがあったので、あまり尖りすぎていたり、辛すぎるカレーは好まれないなと、ある程度の方向転換は必要でしたね。

■おばんざいのように小鉢が並ぶ、印象的な「本日のカレープレート」

‐「本日のカレープレート」のみの1メニューの提供ですが、小鉢がたくさんあり、カレーにしては珍しい提供方法ですよね。器もとても素敵です。

アメリカのサンフランシスコで暮らしていた時「ヒースセラミックス」という陶器メーカーが偶然近くにあって、カレー提供にこれがベストと思い、まず器を揃えました。特に意識していませんでしたが、間借り時代から自然とこのような形で提供していましたね。器の数が多いので片付けの手間はありますが、独自の特色を出せるなとも思っていました。

‐「本日のカレープレート」の内容は、ターメリックライスと、固定カレーが2種類に、2種の付け合わせがそれぞれ小鉢で提供される形ですね。

チキンキーマカレーと豆カレーが固定カレーで、それぞれ旬の野菜などでアレンジしています。その他に、おかずのように食べて頂くその日の付け合わせを、5種程度の中から2品選んで頂く形です。ご飯の量も150g、200g、300gから選んで頂けます。小鉢が多く食べ方を迷われる方もいらっしゃるので、食べ方のご提案書を席にも置いてありますが、カレーとご飯、小鉢はそれぞれを別に食べて頂いても、混ぜて食べて頂いても、基本的には自由にお楽しみ頂ければと思います。野菜などの素材自体が持つ甘味や苦味を引き出しながら、スパイスの香りや風味も楽しむことができるようなカレーづくりを目指しています。

‐ 野菜がメインのカレーにしようと思われたのは何故ですか?

僕は千葉出身ですが、間借りを始めようと思っていた頃に、中学の同級生が地元に戻って農家を営んでいると知って連絡をしたんです。そうしたら僕も見たことがないような、八百屋さんにもあまり置かれていない本格的な西洋野菜を育てていて。この野菜でカレーをつくったら面白いなと思いましたし、きちんと育てられている有機野菜の美味しさとにとても感動したというのが理由ですね。

そういった農家さんと取引しているので、安定的な仕入れが難しい時もあります。でもその時のベストな野菜を美味しく食べて頂きたいので、日々メニューを変えて工夫をしています。毎日変わるメニューは、公式サイトでも告知しています。

■カレーの概念を広げ、「スパイス創作料理」を目指して

‐ 今後のご自身の展望はありますか?

僕はバックパッカーのような旅が好きで、インドカレーを現地で食べ歩いた時、フレンチやイタリアンに比べて体系化しておらず、作り手によって全く違うものになるんだなと驚いたんです。カレーってとても自由だなと思い、自分の中でカレーの概念がどんどん広がっていきました。

そこまでクセが無くて食べやすく、素材の味とスパイスのバランスを取りながらつくる、というのが自分のカレーのコンセプトですが、今後はカレーにとどまらない、創作スパイス料理もつくっていきたいですね。

また東南アジアの各国、特にマレーシアで感じたのが、多民族国家だと食文化もミックスされているのでそれがすごく面白いなと思います。それを自分のつくるカレーにもそういった部分を落とし込んで、日本向けにローカライズしたものを今後もつくって行けたらなと思います。

‐ 最後に、これから間借りを考えている方へメッセージがありましたらお願いします。

飲食店を経営した事がないという方は、間借りを経験しておくのはおすすめです。他の店舗で働いている時とは全く違う体験ができますし、オペレーションや仕込みの面でも、できる事とできない事があるのがはっきりわかるからです。僕の場合も、こうしようと自分で考えている事と、実際にやってみたのとではかなり違いがありました。

僕の場合はご縁にも恵まれて間借りから比較的早い期間で実店舗営業できる事になりましたが、最終的には実店舗をと考えている方も、間借りで営業を続けていく事を、まずはひとつの目標とされるのが良いのではないかと思います。続けることで店の認知度も上がりますし、メニューやオペレーションの熟練度も上がっていくので、実店舗を運営することになっても、間借りの経験が色んな意味で財産となるのではないでしょうか。


■店舗情報
店舗名:表参道 ハブモアカレー Have More Curry
住所:東京都港区北青山3-12-7 カプリース青山 地下1階
電話:03-3407-7001
E-mail:info@havemorecurry.jp
営業時間:11:30~20:30(LO 20:00)
定休日:木曜日、臨時休業、営業はGoogleの店舗情報をご確認ください
公式サイト:http://havemorecurry.jp/
SNS:TwitterInstagram食べログ