2回の間借り運営を経て実店舗オープンへ!美しい皿盛りデザートを提供するデセールバー「A la fin Tokyo(アラファントーキョー)」

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2019年3月に池尻大橋でデセールバー「À la fin Tokyo(アラファントーキョー)を間借り運営していた林巨樹(はやし おおき)さんは、フランス留学の経験やパティシエコンテストの入賞経験もある新進気鋭の若きパティシエ。2019年5月14日から6月12日までは、中目黒にある隠れ家バー『GALLERIA 6』を間借りしてカフェタイプのデセールバーを出店。7月には赤坂での実店舗出店も決定しているという林さんに、これまでの経歴や間借りを経てスタートされる実店舗運営についてインタビューしました。

◆小学生の頃からの夢、トップパティシエ

「前回の池尻大橋での店舗、今回の中目黒の店舗と、2回目の間借りデセールバーを運営されていますが、軒先レストランを利用しようと思ったきっかけはなんですか?」

自分はもともと、調理科高校卒業後、エコール辻東京に1年間通い、辻調理師専門学校で勤務、フランスに修行に行って、コンクールも優勝を目指してやっていたというような、バチバチのパティシエ気質の人間なんです。 でもこの先の飲食業界の流れを自分なりに考えた時、飲食業界に憧れている人はどんどん減ってきているような状態で、コンクールで世界チャンピオンになった人のところにスイーツを食べに来る、という時代はもう終わっていくのかなと感じたんです。今は小さい子たちの将来の夢が「YouTuber(ユーチューバー)」という時代になっているので、飲食業界もYouTube業界のように、自分の個性を主張したオリジナリティあふれるクオリティの高いものを提供する方がお客様にも喜ばれるし、自分達も笑顔で作れるんじゃないかと考えるようになりました。
でも飲食業界には現状YouTubeのようなものはありませんから、自分の店舗を出すにはお金を貯め、お金を借り、お店を出し、失敗したら場所も変えられないんだな、と悩んでいた時、「軒先レストラン」というサービスが見つかって。間借りという飲食の業態が一つあり、完成されている中で、自分がそのステージに立てるということを考えると、軒先レストランはすごく良いサービスだなと思い、借りることができるお店を調べているうちに、この場所でやってみたいなというお店がいくつか出てきて、間借りを始めたという感じですね。

「パティシエという職業は、以前から目指されていたのですか?」

もともと料理が好きでしたし、祖父が板前だったので子供の頃から男性が料理をするのは恰好良いと思っていました。フランス菓子が好きだったので、小学生の時バレンタインのお返しに、当時はまだ高価で珍しかったマカロンをつくってみたんです。 子供にとっては駄菓子のほうが美味しく感じる頃だったかもしれませんが、僕はマカロンを一口食べた時に、すごい魅力を感じて。いままで他のお菓子で感じたことのない喜びがその一口にあったんです。 その時食べた人から「おいしい」「マカロンって自分で作れるんだね」と言ってもらえて、こんなに喜んでもらえるんだったら、みんなに驚きを与えるパティシエになりたいと思い「トップパティシエになりたい」という夢を作文に書いたんです。それが小学校4年生の時ですね。

「コンクールにも力を入れていたそうですね。」

そうですね、コンクール野郎といってもいい程でした(笑)。「お酒とスイーツ」という組み合わせに魅力を感じたのも、洋酒メーカー主催のコンクールがきっかけです。そのコンクールで「スイーツにとって最もおいしいお酒の使い方をしてください」と求められてレシピを考えた時に、「お酒って、甘さに乗っかるとおいしいな」と感じて。そういう甘さとアルコールのアプロ―チというものを、コンクールで思いつきました。 コンクールは楽しいものでもありますが、世界大会を目指すとなると、その人を周りが育てようとしてしまう傾向があるように思います。僕も優勝を目指して頑張っていましたが、次第に「日本代表って何だろう?小学生の頃に憧れたトップパティシエってこういうことなのかな?」と疑問を持つようになりました。 コンクールとは違う形、例えばお客様に「あの人のデザートが食べたい」と思ってもらえる方が、やりがいがあるんじゃないかと思ったんです。そんな感じで考え方が変わり、シフトチェンジして間借りデセールバーを始めることにしました。コンクールでチャンピオンを目指すという王道のスタイルから、一気に違う道へ行ったという感じです。 間借りを始めるにあたっては、どんな場所であっても機材を工夫して、その場所を自分のキッチンに変えるか。そしていかに素早く、クオリティ高く目的のものをつくることができるかという点で、コンクールで得た経験が生きました。

◆密度の濃い1年間を過ごしたフランスでの修業

「フランスに修行に行かれていたということですが、時期はいつ頃ですか?」

2015年の10月から1年間、フランスのアルザス地方のクラシックなパティスリーで働きました。パリから新幹線で2時間程のドイツとフランスとスイスの国境あたりにあります。北海道に似た気候で、お菓子を学ぶならここだ、と言われているような、昔からの憧れの場所でした。

「言語の問題はありましたか?」

英語が苦手だったおかげか、逆にフランス語はすんなり入ってきたんです。フランス菓子づくりでは、作業の名前や道具の名前がフランス語なので、意外とレシピを見たり作り方を調べたりしているうちに言葉も身についていきましたね。

「実際にフランスで修行をされて感じたことは?」

フランスの牛乳やチーズやバターは圧倒的に美味しいです。牛の種類と食べているエサが違うので、乳脂肪率や味わいが全然違いますよね。輸入しなくて良い分、量も沢山使えます。ある意味、フランスの職人はアスリートとも言えると思います。例えば牛乳は30~40リットルを使ってそこに砂糖、卵を入れ、10kgの鍋に入れれば自分の体重を超えてきます。自分も当時は今より10kg以上体重が重く、筋肉質になっていたと思います。 日本では、お菓子はハレの日の食事や贈り物だと思いますが、フランスではお菓子を朝・昼・晩と必ず食べるので、日本の7~8倍くらいの需要があります。また町と町がとても離れているので、町一番のケーキ屋さんは、その町の全ての人のバースデーケーキを作ります。僕がいた都市は大きかったので、1日当たり30~40個のバースデーケーキは当たり前で、最初は規模の違いに驚きましたね。 味と仕事の量と経験値量、言葉も学べたのもありますが、フランスはコンビニが無いので、街のケーキ屋さんがコンビニの役割もしている。フランスのパティスリー文化がそういう大衆的なものだという事も理解できました。修行したのもクラシックなお店だったので、フランス菓子というパッションを自分の中に得られた事も大きかったです。自分にとってこの1年は、最も密度の濃い1年でした。

◆パティシエが作る「新しいデセール」の提案から、実店舗オープンの道へ


「「デセール」について詳しく聞かせてください。」

英語の「デザート」=フランス語の「デセール」です。デセールというものは食事の後に食べるデザート、カフェに行って食べるデザートという意味で、お皿に盛り付けるタイプのスイーツです。ホテルやレストランでもデセールが提供されていますが、彼らは料理人です。料理人の観点から作る皿盛りデザートは、主役になることはありませんが、パティシエが作るデザートであれば完全に主役のものが出来上がります。 例えばすでに世にある美味しいケーキを更に無駄を省いてゼラチンを減らしたり、バランスを整えたり。お皿の上だから表現できるソースのバランスや季節感、色合いを工夫したアートが作れます。自分は「新しいデセールをパティシエが提案」という形で「デセールバー」を営業しています。

「店名「À la fin Tokyo(アラファントーキョー)」の意味、由来は?」

「アラファン」は「最後に」という意味です。1度目の間借り先の池尻大橋では日曜日限定の営業だったので、「週末」「1週間の最後」「食事の最後に」「1日の最後に」など、皆様の1日の終わりにちょっと添えて欲しいという意味でした。ただのケーキではなくお酒と楽しむスペシャルな時間というのは、最後に楽しみたいですよね。 Aの上にアクサンが付くことで一気にフレンチっぽくなり、フランスのデザートを作ろうとしているということがぱっと伝わりやすい事もあります。また、急に自分の中で色んな思いが起こって働き方を変えた事もあって、平成最後にこういう活動したという記録の意味もありますね。

「初めて間借り営業した際の印象はいかがでしたか?」

日曜日の夜限定の営業だったので人通り自体は少なかったですね。でも隣駅は三軒茶屋や渋谷なので、日曜日の夜に近隣にお客様自体はいるはずだと考えました。今はSNSで集客できるので、人気の場所自体にお店を構える必要はないと思うんです。「この近辺でおいしいデザート食べられるお店があるよ」「朝まで営業しているデザートバーがあるよ」ということが広まって、2~3軒行った後に来てもらえればと思っていました。 目黒川の桜祭りの際には、かなりSNSが育ちましたね。ハッシュタグに「#桜スイーツ」とつけると、チェックして下さった方が来店して、写真と僕のコメントなどもインスタにアップしてくれるんです。またそれを見た方が来店し、さらに輪が広がっていく。SNSの可能性をかなり感じました。

「現在営業されている中目黒店は期間限定ですか?」

1ヵ月の限定営業で、その後は実店舗プロデュースをする予定です。僕と同じような考え方を持っている方と出会い、飲食店経営の方向性や方針で意気投合したんです。その方が事業展開としてデセールバーを僕のプロデュースで営業したいということになり、7月1日に赤坂でオープンの予定です。深夜の11時から朝までの営業になると思います。

「間借り営業をやってみたからこその出会いだったのかもしれないですね。」

そうなんです。共通の友人はいましたが、その友人が間借り営業中にお店に食べに来てくれ、僕の未来像などを話したら、同じくらい熱い人がいるから会ってほしいと言われたのがきっかけなんですよね。

◆メニューはデザート3種類がメインの週替わり。ランチセットも

「メニューは週替わりでしょうか?」

はい、デザートの3種類がメインです。主役のデザートとして1450円と、ちょっと邪道ですがスペシャルなデザートが1100円、食事の後でも軽く食べられるようなテイストのものを850円くらいで用意しています。 そのほかにランチセットもあり、そちらは牛肉の赤ワイン煮込みと付け合わせにジャガイモのピューレとバゲット、それにお好きなデザート、ドリンクを選んで頂いています。

「制約がある間借りで提供できるのがすごいと思うメニュー内容ですね。」

間借りなのにバリエーションが凄いと言われる事もありますが、うまく乾燥材料を使ったり、工夫して組み合わせてつくっています。今のところ上手くできていると思いますが、もっとできるだろうっていう思いもまた、ありますね。今はチャレンジ期間なので、たくさんレシピを作りたいと思っています。

◆軒先レストラン=「料理人の路上ライブ」!?

「実際に使われてみて、軒先レストランのような間借りシステムをどう思いますか?」

素晴らしいと思います。右も左も分からず、お店の出し方も知らない、マネジメント知識もない、ただお菓子を作ることが好きで、自分のお菓子を作りたい人たちは沢山いると思いますので。 パティシエの世界は、コンクールで優勝しなければ自分のお店を出せません、という世界になってきていますが、本当は誰もがお店を出せたらいいと思うんです。ただ、やはり飲食店経営は難しく厳しいものですよね。予算や素材の質などから、どこを削るかとなった時、理想の美味しいものからはだんだん離れていってしまいます。 間借りシステムを使えれば場所代が削減できるので、素材に予算がかけられ、美味しいものが提供できる。そこから自分のビジョンをつくっていけます。 また間借り営業をすることでアンテナを張っている方々の目に留まりチャンスがやってくる可能性もあります。軒先レストランは、そんな「スターが育つ場所」なんじゃないかと思います。例えると料理人が「路上ライブ」できるような空間なのかなと。間借りして店舗経営を試すもよし、開店準備も良し、ロジックを学ぶためにその場の客層を見るのも良しですね。

「これから間借りをしようとしている人に向けてメッセージをお願いします。」

間借りが社会現象になって欲しいなと思います。また全ての間借りをする方に言えると思うのは「制約は工夫次第でどうにでもなる」という事です。オーナーさんとしっかり話をする事で色んな事が実現する事もありますし、コミュニケーションと工夫次第でいくらでも状況改善できると思います。 間借り営業する事は、単にお店を持つよりもはるかに簡単な事ですよね。店舗経営の修行の形が今までより「令和風」になったとも言えるかもしれません。その修行を間借りの形でできるのであれば、是非挑戦して頂きたいなと思います。
■店舗情報
店名:À la fin Tokyo(アラファントーキョー)
住所:東京都目黒区青葉台2-16-4白金ビル1階(GALLERIA6)
最寄: 東京メトロ日比谷線 中目黒駅より徒歩10分
営業日: 2019年5月14日~6月12日
営業時間:平日10時30分~16時(ラストオーダー15時30分)
※営業日、 営業時間はSNSをご確認下さい。
URL:http://alafintokyo.strikingly.com/
SNS:TwitterInstagram
■軒先レストラン
軒先レストランとは、飲食店の使われていない時間を間借りできるサービスです。
これから飲食店をはじめたい開業希望者が、既存の飲食店の空き時間を利用して開業できる間借りレストラン(シェアレストラン)サービス。
飲食店を貸出たい方も登録して貸出することもできます。
軒先レストラン公式HP:https://business.nokisaki.com/cp/restaurant
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