「間借りカレーdiggin’」第三回大久保「日曜喫茶」

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間借りカレー店を営む方にもそれぞれの理由があります。

カレー専門店を始めたいが資金が足りないという方。
そもそも専門店を始めるつもりはなく、趣味として営業している方。
あるいは現職の引退後にお店をやりたいという夢があり、その為の準備として間借りカレー店からスタートしているという方など、多種多様です。

今回ご紹介するお店は3つめの理由により大久保で日曜限定営業をしている「日曜喫茶」です。
店主さんは現職が基本的に副業NGだそうです。間借りカレー店の営業は利益を追求しているわけではないので、完全に副業ではないのですが、そう取られかねない可能性もあるということで顔出し名前出しをしないという形で取材に応じてくれました。 カレーおじさん\(^o^)/(以下、カ):間借りカレーのお店を始めた理由はどのようなものですか?
日曜喫茶マスター(以下、日):引退後に喫茶店をやりたいと思っていまして、その喫茶店のフードのメインにカレーを考えているんです。元々学生時代に喫茶店でアルバイトしていたのと、個人的にカレーが好きで2007年頃から独学でスパイスを合わせるところからカレーを作っていたんですよ。

カ:2007年というとまだスパイスカレーという言葉も広まっておらず、スパイスから合わせてカレーを作るという人がほとんどいなかった時代ですよね。
日:そうですね。それがだんだん作る人が増えてきて、カレーのお店も、間借りカレーも増えていく中で、自分のカレーは知らないお客さんに食べてもらった時に果たしてどのような反応をしてもらえるのだろうかと気になって、お店を始めました。
カ:喫茶店とおっしゃいましたがコーヒーに対してはどのようなこだわりがありますか?
日:僕が学生時代にアルバイトしていたお店からコーヒーを仕入れています。カレーに関してもコーヒーに関してもそうなのですが、自分のルーツに無いものは出さないと決めているんです。思い出を大事にしたいと考えていまして、例えば海外旅行をした際に食べた料理や食材をヒントにして、それをカレーに落とし込んだり、飲み物に関しても同様ですね。
カ:なるほど。引退後に喫茶店といってもまだお若いですし、数十年後になるでしょうから、そのインプットしたものが熟成しすぎる前に一度アウトプットする為にも間借り営業は良いのかもしれないですね。
日:そうなんです。例えば普段色々な場所でカレーを食べている中で、自分ならここをもっとこう変えたいんだけど、それはただの自己満足なのか、あるいは他の人にも楽しんでもらえるものなんだろうかとか考えていることをお店で実行できるのはとても有難いことです。すぐにレスポンスもらえますから。

カ:現職をしっかりと続けながら、その中で間借りのお店を続けていくという状態ならではの大変なことってありますか?
日:やはり仕事で何かトラブルがあって、徹夜しなくてはいけなくなったりした翌日が間借りカレーの営業日だったりするとキツいですね。

カ:それでも休まないんですね。
日:ええ。本業でというか飲食一本でお仕事している方々へのリスペクトがありまして、そんな方々って何かトラブルあっても簡単に休まず営業してらっしゃるじゃないですか。そういうのを見ると、間借りだからと言って簡単に休んでしまうのは甘いよなと思うので、自分もゆくゆくはお店持ちたいというのもありますから、その時にトラブルあったらどうするかと考えた時に、きっと営業するだろう、ならば今もその予行演習なのだから頑張らないと、という感じです。
とにかく真面目に、間借り営業をしている日曜喫茶マスター。
その真面目さが味にも現れています。
カレーは日替わりなのですが、この日のカレーはスパイシーマトンカレーのプレート。
オーセンティックなインド料理としてのマトンカレーに近い味わいで、重厚かつ鮮烈なスパイス感でスプーンが止まらない美味しさです。
副菜にも凝っていて、ポテトサラダはインド料理のライタのようにヨーグルトを使ったもの。
しらすとキャベツの炒め物は南インド料理のポリヤルのようで、食感の変化が楽しいです。 一緒についてくるとうもろこしと豆のダルスープは、そのまま飲んで良し、カレーにかけて混ぜても良しの逸品。
専門店に負けないクオリティの高さなのです。 水出しアイスコーヒーの美味しさも出色。
スッキリとした口当たりで、香りは華やか。これだけ飲んでも美味しいですが、カレーの後に飲むと美味しさが一段階上がります。 9:00からモーニング営業もしているということで、モーニングメニューもいただきました。
3種の自家製あんことサワードウブレッドのトーストです。
3種のあんこは左からひよこ豆と胡麻の中東風、えんどう豆のうぐいすあん、緑豆とココナッツミルクのマレー風と、非常に面白い組み合わせ。
発酵バターフレイバーのオリーブオイルも添えられ、それぞれ酸味のあるパンと合わせて食べると、ベクトルの違う甘味と深みに魅了されます。
個人的にはマレー風あんこがかつてシンガポールで食べたカヤトーストを思いだし、とても幸せな気持ちになりました。
思い出を大事にしているというマスターの思い出と、僕の思い出がリンクしたからこその幸福感でしょう。 趣味で間借りのお店を営業することに対して批判する方もいます。
中には本業の邪魔になるという方もいます。

しかしあえて厳しい言い方をするならば、本業だからこその矜持を示すごとく、より美味しい料理を出してくれていれば何の邪魔にもならないのではないでしょうか。
ユーザー側からしたら美味しいお店が増えるのは嬉しいこと。そういう意味でもレベルの高い間借りカレー店が出てくることは、カレー業界の活性化につながると考えます。 そして日曜喫茶のように高いレベルの味を出せる方が間借りで営業しているのは、いずれ出すであろうお店のオープンを待つという楽しみも増えるわけです。 日曜喫茶、名前のごとく日曜営業ですがお休みもあります。
詳しくはお店のSNSをチェックしてみてください。
タイミングが合えば是非行ってみてほしいお店です。思い出がリンクするかもしれません。

営業情報

店 名   日曜喫茶
住 所   東京都新宿区百人町1-24-8 百人町スプーン内
営業時間  毎週日曜、11:00-17:00ごろまで
オープン日 2021年4月28日
https://twitter.com/nichiyou_kissa
https://www.instagram.com/nichiyou_kissa/ 2006年から毎日カレーを食べ続けているカレーおじさん\(^O^)/
TBS「マツコの知らない世界」ほか多数のメディア出演、カレー記事の連載、カレープロデュースまで行うカレー偏愛家。
http://akinolee.tokyo/?page_id=1380
「間借りカレーdiggin’」は毎月15日に掲載いたします!!